4.ウエディングケーキと幸せのドラジェ

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 五月に入ると街を彩るケヤキ並木の緑が明るい日差しを浴び、つい先月までその冷たさに身を縮めていた風にもホッとするような温もりが感じられるようになる。仙台は四季折々の良さがあるけれど、私は今頃から夏までの間が一番好き。寒くも暑くもなくて過ごしやすいし、空気も澄み切った感じがして本当に気持ちがいい。 「ええと、今日は五月三日の火曜日、と……」  お店の掃除を終え、ランチ分のコーヒーを抽出している間に現在の予約状況を確認する。ゴールデンウィーク初日ということもあり、ディナーはもちろんランチも予約がいっぱい。今日は火曜日だから本来なら定休日なんだけれど、多くの客足が見込める祝日だし、来週の土曜日はむっちゃんと英理姉の結婚式でお店をお休みにするので、その代替日というわけ。  結婚式の日程が決まった時は五月なんてまだまだ先だなぁ、と思っていたけれど、もう来週なんだもんね。なんだかあっという間だったように感じる。  英理姉はつわりに苦しんだ時期もあったけれど、それも徐々におさまってきて妊娠十四週目。この『何週目』という言い方、馴染みがないせいかどうもピンとこないのは私だけかな? ちなみに四ヶ月目らしいんだけれど。  それはともかく、人生最大のイベントを控え、むっちゃんと英理姉は日に日に喜びが増しているみたい。特に英理姉はウエディングプランナーさんと密な打ち合わせを繰り返し、パーフェクトな式にしようと相当気合いが入っている。式の内容やドレス、テーブルセッティング、引き出物はもちろん、招待状も得意のカリグラフィーで直筆だったし、ウエディングケーキも自作する予定で、とにかく何から何まで徹底的にこだわって準備中だ。 ↓【定禅寺通りのケヤキ並木】image=512447610.jpg
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