4.ウエディングケーキと幸せのドラジェ

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 孝輔のパティスリー教室は既に一度行われているそうで、先週の火曜日は英理姉に誘われて私も参加。といっても、私はお菓子作りの技術を学ぶためというより、出来上がったケーキの味見と消費要員。もちろん英理姉も味見するけど、お式と赤ちゃんのために甘いものは控えているみたい。  さて、一口にウエディングケーキといっても昭和の大スターの披露宴で見るような高さ数メートルのものから、お誕生日ケーキをちょっと大きくしたもの、円型ではなく四角いケーキなど形はさまざま。そんな中で英理姉が選んだのは、円型のケーキを大、中、小と重ねた三段構造のケーキ。  このタイプのケーキが世に広まったのは1858年のイギリス。ヴィクトリア女王の第一王女の結婚式が盛大に行われ、その様子が週刊新聞で特集記事になり、このウェディングケーキの挿絵が掲載されたことで評判になったんだって。英国王室のロイヤルウエディングは現在でも大変な話題になるけど、当時も同じだったというわけ。  この三段にも意味があるそうで、一番大きい下の段は当日出席してくれたゲストと一緒に食べ、真ん中の二段目は当日来られなかった人に後日おすそ分け、そして一番上の小さい段は、将来の結婚記念日のお祝いや、生まれてくる子どものために取っておいたんだって。 今の感覚で考えると、ケーキといったらスポンジケーキに生クリームやフルーツを使っているから、当然『早めにお召し上がりください』な一品だ。ケーキを数年間取っておくってどういうこと? と思ったけれど、当時のケーキはラム酒漬けのフルーツを入れた生地をシュガーペーストでカッチカチに覆った『シュガーケーキ』というもの。このケーキ、湿気を防いで保存すれば、なんと100年くらいもつんだって!
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