4.ウエディングケーキと幸せのドラジェ

5/44

1777人が本棚に入れています
本棚に追加
/644ページ
 なぜそんなに長持ちするかというと、外側がシュガーペーストで覆われているため、水分の少なさでカビが生えにくい上、その高い糖度が細菌の持つ水分を吸い出す働きをし、繁殖できずに死滅してしまうから。 その最たるものがハチミツで、考古学者のT.M.デービス博士が古代エジプトの墳墓から約3300年前のハチミツ瓶を発見した際、ビックリなことに、その品質にはほとんど変化がみられなかったんだって。 甘いものっておいしいし、幸せな気分にしてくれるけど、自然の防腐剤でもあるというわけ。そういえば昔からある和菓子も常温で保存が可能なものが多いもんね。  英理姉が考えているウエディングケーキは、スポンジケーキに白い生クリームでベースを作り、披露宴のイメージカラーであるブルーと白のバラをすべての段に連なるように配置する、というもの。  当初はバラも生クリームで作るつもりだったけど、溶けてしまったり、運ぶ途中で崩れたりすると困るので、当日は何もデコレーションしていない状態で式場へ運び、その場で生花のバラを飾ることにしたみたい。その分、ケーキ本体の出来にはこだわりたいということで、この日は口どけ滑らかなスポンジケーキを作る練習と、そこに挟むフルーツは何が良いかという試作の二回目。と言っても器用な英理子姉だから、私はただ見学しているだけなんだけどね。 「本当はフランス式にクロカンブッシュを作りたかったんだけど……。一から作ると手間がかかるし、あまり持たないから断念したのよ」  半分にスライスしたケーキに孝輔直伝の生クリームをたっぷりと塗り、英理姉がブルーベリーとラズベリーを贅沢に配置しながら言う。
/644ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1777人が本棚に入れています
本棚に追加