4.ウエディングケーキと幸せのドラジェ

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 クロカンブッシュとは、小さめのシュークリームを飴などで固めながら、ツリーのように円錐型に積み重ねて作るフランス生まれのお祝い用ケーキ。結婚式だけでなく、クリスマスやいろんなお祝いに登場するものみたい。 なぜシュークリームかというと、『シュー』はフランス語でキャベツのことで、欧米では赤ちゃんはキャベツ畑から生まれてくると言われているらしく、子孫繁栄を願う縁起物とされ、同時に豊作を願う意味も込められているんだそう。また、クロカンブッシュに用いるシューは、祝福してくれる人たちを表現するという考えもあり、できるだけ高く積み上げるものなんだって。 「そうだねぇ。シューと中のカスタードが長持ちしないし、実際に食べる用となると難しいんだよな~。作ってすぐに食べられればいいんだけど」  孝輔が英理姉の作業を見守りながら言う。パティスリー教室は東雲家のダイニングで行われたんだけど、家族みんなが長身のせいか、どの部屋も一般的な日本家屋より広く、天井も高い造りになっている。 「そうか、シュークリームは要冷蔵だもんね」  そう言った私にうんうんと頷く。クロカンブッシュを作るにはそれこそたくさんのシュークリームが必要だろうし、確かに英理姉個人でこなすのは難しいかもしれない。  保存が効くシュガーケーキを作る案も当然出たらしいんだけれど、いろんな装飾や細工ができるだけに、カラーもデザインもほとんど無限大になってしまうため、凝り性の英理姉がなかなか決められなかったみたい。仮にデザインが決まったとしても、その理想を形にするには技術が伴わないし、かといって習得するには時間が足りないという理由もあったようだ。 大事な身体だし、お式に向けて公私共に多忙を極めているのだから致し方ないよね。
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