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「子どもの頃から憧れていた結婚式だから、それこそいろんな夢や理想があったわ。最初はそのすべてを実現しようと躍起になっていたけど、モンシューに言われたの。『これからは自分たちだけの力で家庭を築いていかなくちゃいけないんだから、背伸びしたり、無理すべきじゃない。今できる精一杯のことでいいじゃないか』って」
その時の情景を思い出したのか、パレットナイフを手にしたまま英理姉がほうっ、と溜め息をつく。
「へぇ! むっちゃんがそんなことを?」
「ヤバーい! かっこいい~!」
驚く私に同調する孝輔。まぎれもなく男子なのに、どうしてこうも違和感なく女子会的なノリになるんだろ? 不思議だ……。
「そうでしょう? モンシューって本当に冷静で誠実で素晴らしい人だわ……。それにね、『僕にとっては美しいマシェリがいてくれれば、それだけで人類史上最高の結婚式になるよ』って言ってくれたの!」
ブハッ! マ、マジか兄!? というか、『僕』って? 『僕』って誰!? いつも『俺』って言うくせに!
思わず吹き出しそうになる私の横で、英理姉はこれ以上ないくらいのウットリ具合。その隣ではなぜか孝輔までもがウットリしている。
「ステキ……ステキだわ、英理子姉さん! アタシもそんなダンナ様と結婚したい……。いいえ、きっとしてみせるから!」
え? 待て待て待て。どうした孝輔? 新しいキャラを模索しているとか? 女子キャラは百瀬さんの克子お義母さまだけで十分ですよ?
孝輔の女子化はともかく、出来上がったケーキは、ふんわり食感のスポンジとクリームの甘さ、それに甘酸っぱいベリーが何とも絶妙なバランス。英理姉は「さらにブラッシュアップするわ」と張り切っていたから、当日は更においしいケーキが食べられるのかな? 楽しみ!
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