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この日は夕方からブライズメイドとアッシャー、それからウエディングプランナーさんを交えての打ち合わせもあり、当日の役割分担が決定。私は挙式の時に英理姉のドレスの裾を整えたり、指輪の交換の時にブーケを持ったりするお役目だ。私一人じゃなく、英理姉の親友である慧子さんも一緒だから心強い。
ただ、お式には英理姉のパリ時代の友達もはるばるやってくるみたい。当然ながらその方たちはフランス人なわけで、英語はおろかフランス語といえば『ボンジュール』しか知らない私は今からちょっとドキドキ。どうか話しかけられませんように……。
そんなことを考えていると、ちょうどコーヒーの抽出が終了。今日はたくさんのお客さんがやって来るだろうから、コーヒーもポット二つ分用意して準備万端だ。
なにはともあれ、今年の桜木家最大のイベントも怒涛のゴールデンウィークを乗り切らなければやって来ない。
「よしっ、今日も頑張るぞ!」
決意も新たに予約台帳をしまうと、厨房の引き戸が開いてお義母さま──もとい、百瀬さんが姿を見せた。
百瀬さんといえば、愛するイリーナは本当に大学を辞めてしまい、東京でお世話になっていたホームステイ先も出て、おとといから百瀬さんのアパートに身を寄せている。子ども向けの英語教室講師という仕事も決まっているそうで、幸せいっぱいって感じ。といっても私に対するお義母さまの教育は相変わらず厳しいんですけれどね……。
「今日のAランチはイワシのフライ・梅タルタルソース添え、Bランチがポークソテーのハニーマスタードソースです。質問はありませんか? はい、無いようですね。では以上です」
ちょーちょーちょー! こっちはメモ帳もペンも出してないし、一言も口にしていませんからね? まったく、性懲りもなく毎日意地悪なんだからなぁ。
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