4.ウエディングケーキと幸せのドラジェ

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 ところで、遼大君たちは家族として出席するだけでなく、ヴァージンロードに花びらを撒くフラワーボーイ、結婚指輪を運ぶリングボーイとしてのお役目もあるそうで、英理姉から「一週間いい子にして、結婚式でもお行儀良くできないと、孝輔君は来てくれないわよ」なんて言われた途端、シャキーン! と姿勢も聞きわけも良くなったのはおかしかったな。二人にとって孝輔は、サンタさんみたいな存在になりつつあるのかも……。  さて、賑やかな樫崎家ご一行が帰って行くと、それから少しして今度はイリーナがやって来る。百瀬さんと熱愛中の彼女は、愛という名の美容液でますます目映いくらいに美しい。 「マドカさん、ヨーイチさん、コースケ、こんばんは。ハーイ、Darling(ダーリン)!」  カウンターにやってきた彼女は、私たちに挨拶した後、奥にいた百瀬さんに笑顔で手を振り、小さな声で控えめに投げキッス。ワオ!  私たちしか気づいていないというのに、百瀬さんはにわかに顔を真っ赤にして「バ、バカッ!」と動揺しまくっている。 ぷぷぷ……カワイイなぁ。でもさ、アメリカ人のイリーナと付き合っているんだから、ここはごく自然に投げキッスし返してほしいところだ。 「俺、現実世界でダーリンって呼ぶ人初めて見た」   出来上がったオムライスとカツカレーを厨房のカウンターに並べ、陽ちゃんが真面目な顔で感心している。確かにそうだね? 私も初めてかも。孝輔は「俺もダーリンって呼ばれてェー!」って身をよじらせてたけど。  三番テーブルに料理をサーブし、イリーナにオーダーを伺うと、彼女はカウンター上に置いたスマホをチラリと気にした。 「では、とりあえずビールを一杯お願いします。待ち合わせをしているので、食事はその人が来てからにしますね」  あら、そうなんだ? 誰だろう?
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