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「メンズ?」
グラスを拭きながら孝輔が冗談っぽく尋ねる。その背後で勢い良く振り向いた百瀬さんがメデューサ並みの睨みをきかせているのは……教えないほうが良さそう。
「違いますよ。可愛らしい女性です。コースケも知っているでしょう? フローリストみやけのアスカさんです」
ああ、花屋の成田さん! 去年孝輔が勘違いして引きこもった時に初めて会って、それ以降は見かけた時に挨拶し合う程度だけど……。
「あすかちゃんのことはもちろん知ってるよ? だけどイリーナとの繋がりは初耳なのね」
どういうこと? と続ける孝輔にイリーナが教えてくれたところによると、昨日お花を買いにフローリストみやけへ行った際、対応してくれた成田さんと初対面。持ち前のコミュニケーション能力と、年齢が近いということもあってたちまち友達となり、早速一緒に食事しよう! ということになったんだって。
「そういえば、もうすぐマドカさんのお兄さんの結婚式がありますよね? アスカさんは奥様からブーケとウエディングケーキ用のお花を頼まれているそうで、そのために特別に作った青いバラの手入れをしていたところだったんです。とても珍しくてきれいだったので、私から声を掛けたのが始まりなんですよ」
あら! そうだったんだ? 青いバラは例のウエディングケーキ用のだよね。英理姉が成田さんにお願いしてるとは知らなかったよ。
「ああ、そういえば英理子姉さんは、コミュニティセンターでやってたフローリストみやけ主催のアレンジメント教室に参加してたもんね」
「へぇ~それも初耳。というか、どうしてそんなことまで知ってるの?」
感心と驚きを持って問うと、孝輔は気取った様子で「A-ha?」と肩をすくめてみせた。
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