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二月も中旬に差し掛かると、仙台の天気は暖かくなったり、冷え込んだり、風が吹いたり、雨が降ったり、雪が降ったりと、とにかく変わりやすくなる。でもそれも春が近づいている証拠なのかな。
「う~! 寒い~!」
馴染みのお客さんを見送り、表の札を返して店内へ戻ると、そのぬくぬくとした温かさもさることながら、厨房で片付けをしていた陽ちゃんの姿にホッとするような、幸せな気分になる。
先週、晴れて恋人同士になれた私たちだけど、まだ日が浅いせいか、お互いにどうも実感がわかないというのが正直なところ。今までも定休日以外は朝から晩まで一緒にいたわけだから、特段なにも変化が無いんだよね……。
仕事中は忙しくてそんな雰囲気皆無だし、この間のバレンタインデーも用意する時間がなくてチョコしかあげられなかったし、キ、キスだってあれっきりだしさ。陽ちゃんがイチャイチャするタイプじゃないってことはわかってるけど、ちょっとだけ寂しいような……。
そんなことを思いながら、最後のお客さんのコーヒーカップやグラスを下げてくると、何気なく陽ちゃんと目が合った。私がそうなるよりも先に浮かぶ、柔らかな笑み。それだけで思わず黄色い悲鳴を上げちゃいそうなほど満ち足りた気分になる。
前言撤回! ぜんっぜん寂しくなんかありません! 陽ちゃんが恋人なんて、私は美杜町一の果報者でした……!
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