4.ウエディングケーキと幸せのドラジェ

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 常連さんをお店の外まで見送ると、ちょうど成田さんが来店。挨拶を交わしながら一緒に店へ入ると、孝輔の元気な「いらっしゃいまっせぇ~」の声に驚いている。そりゃあそうだよね。去年と違って孝輔がお手伝いに来てくれることは少なくなったし、まさか今日彼がここにいるとは思ってもみなかったんだろう。 「こっ、孝輔さん……!?」  一瞬で頬を染め、黒目がちな目がまん丸に見開かれる。成田さんにとってはまさに不意打ちだ。時間的に仕事を終えて真っ直ぐここへきたらしく、髪型やメイク、服装が気になったのだろう。好きな人との思いがけない遭遇に、その場でアタフタしちゃうのがなんとも初々しい。 「プリヴェット、あすかちゃん! 今日もカワウィーね~♪」  対して、孝輔のチャラさが一段と際立つ。彼にとっては『こんにちは』とか『いい天気ですね』と挨拶するのと同じようなものなんだろうけど……。罪なヤツ。 「さぁさぁ、とりあえず席へどうぞ」  成田さんの腕を取り、カウンター席へご案内する。立ち上がったイリーナがハグで迎えたけれど、孝輔と更に距離が近くなったせいか、成田さんはカチコチ状態。それでも他愛もない話を交わすうちにだんだんと緊張も解けてきたみたいだけど。  イリーナはボロネーゼ、成田さんはミクリヤハンバーグを食べながら楽しい女子トークを展開。その中でも時事の話題として、むっちゃんと英理姉の結婚式の話になった。 成田さんは何の実績もない店員の自分が、結婚式という一大ベントの一端を担うことに大きなプレッシャーと責任を感じているみたい。英理姉からは当日着用するウエディングドレスの写真を見せてもらい、あとは「あすかさんのいいと思うようにやってみて」と一任されているんだそう。
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