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「今回のようなお役目は、この仕事をするようになって初めてのことなんです。センスの良い英理子さんから依頼をいただいて光栄ですし、すごく嬉しいのですが、それと同時に自分で大丈夫なんだろうか? という心配でドキドキなんです」
あら、そうだったんだ?
「だけど、こだわり派の英理姉があれこれ指示しないということは、成田さんなら間違いないものを作ってくれると信じているんじゃないかな?」
そう言うと、孝輔とイリーナも力強く同意してくれた。
「俺もそう思うな。英理子姉さんの審美眼は確かだもん。すべてを任せられるほど、あすかちゃんのセンスとスキルを信頼している証拠だよ」
うんうん! そうだよね。
「私もそう思います。どうせならハッピーな気持ちで、楽しみながら挑戦してみたらいいんじゃないでしょうか。結婚式は幸せのセレモニーですからね」
みんなで激励すると、成田さんは胸のつかえが取れたように目を潤ませながら笑顔を見せてくれた。
「みなさん……ありがとうございます。これまでいくつもブーケのデザインを考えてみたんですけど、時間が経つと直したいところが散見されて、最近は行き詰まってばかりいたんです。でも不安な気持ちを聞いていただいたら、心がすごく軽くなりました」
そうか、そうか……。懸命になるあまり、前に進むことしか頭になくて、自分から袋小路に突き進んじゃうことってあるよね。成田さんは素直で真面目だから、英理姉の期待に応えようと一人で頑張り過ぎていたのかもしれない。
「イリーナの言うとおりだよ。ウエディングの仕事って、その業界にいないと巡ってこないじゃない? だから、あすかちゃんのことがすごーく羨ましい。俺もケーキ作りで自分の力を試してみたかったよ~!」
プレッシャーをも楽しむこの気概……! さすが孝輔、ポジティブだなぁ。でも、そういうちょっとした心がけで全然違ってくるのも事実だもんね。
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