4.ウエディングケーキと幸せのドラジェ

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「その花束は男性が自ら野に咲く花を摘んだり、住んでいる地域の人々から花を集めたりして、愛する人のために作る特別なものなんです。プロポーズされた女性は、男性が差し出した花束から花を一本抜き、『イエス』の返事として男性の胸に挿すんです。それがブートニアの由来なんですよ」 「うわぁ、いいなぁ~!」 「その(いわ)れは知っていましたが、やはり花を贈るシチュエーションというのはロマンチックですね」  ブートニアにまつわるステキな物語に私とイリーナはウットリ溜め息。 「ホントよね! 女子ならみんな憧れちゃう!」  うんうん……って、孝輔! また違和感なく混ざってこないでください。 「よし、俺がプロポーズするときは花束を用意するぞ! 心のラブ・フォルダに保存しておかなくちゃ!」 「えっ……!」  孝輔が『プロポーズ』なんてワードを口にするものだから、ピュアな成田さんは即座にドキッとしている。反対にイリーナと私の反応は『バナナで釘』くらいの冷たさだ。 孝輔のチャラいトークに毎回これほど新鮮な反応を示してくれるのは、もはや地球上では成田さんしか存在しないんじゃないだろうか?  彼女は可愛いし、真面目だし、ポジティブだし、年齢的にも孝輔とはピッタリ。孝輔だってチャラいところはあるけど、とってもいいヤツで、なんだかんだいっても仕事はちゃんとする上に、パティシエとしての才能はとっても豊か。傍から見ていると『もう付き合っちゃおうぜ!』とお節介をやきたくなるけれど……。  以前は成田さんの方から告白して、その時は孝輔がごめんなさいをしたんだよね。でも、二人の関係が気まずくなっている様子は見受けられないし、あの頃と今では状況も変化している。ただ孝輔は昔から自由気ままな性格だから、誰か一人に束縛されるのには抵抗があるのかもしれない。
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