4.ウエディングケーキと幸せのドラジェ

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「こちらとお隣がご両家の控室、斜向かいが更衣室となっております。新郎様の控室は突き当りを右に、新婦様の控室は左へお進みいただいたところにございますので。お嬢様は九時半よりブライズメイドのメイクとヘアセットをさせていただきますので、お声掛けに伺うまで控室にてお待ちくださいませ」  スタッフさんのキビキビとした案内に不慣れな桜木家はキョロキョロと挙動不審気味。お礼を言ってまだ誰もいない桜木家の控室に入ると、同時に深いため息が出てしまい、三人で顔を見合わせて笑っちゃった。  時計を見ると八時半ちょっと過ぎ。ええと、私は九時半までの一時間はフリーってことだよね。むっちゃんと英理姉に会ってこようかな? そんなことを考えながら準備されたお茶をいれていると英理姉のご両親が到着。元外交官のお父さんはスラっと背が高く、モーニング姿がとってもダンディ。対するお母さんは涼やかな和風のお顔立ちに黒留袖がとっても良く似合っている。所作も慣れた感じで余裕のある美しさだ。書家という仕事柄、和服を着る機会が多いのかもしれない。  なごやかな雰囲気でご挨拶していると、控室の前を大きな人影が通り過ぎ、すぐに戻ってくる。誰かと思ったら孝輔と孝喜さんの東雲兄弟。二人ともブラックスーツでバッチリ決まっている。普段は白いシェフコートかカジュアルな普段着しか見たことがないから、本当に目が覚めるようだ。 「プリヴェット、まどかちゃん! 本日はおめでとうございます」 「おめでとうございます」 「ありがとうございます! 二人ともとってもステキ!」  さすが欧米の血が入っていると違うなぁ! と感心する私に、孝輔が最高に気取った様子で前髪を払い退けた。 「ふふふ、そうでしょ? 自分でもそう思う。いやぁ、心配だなぁ~! むっちゃんが主役なのに女性ゲストの視線は、すべて俺に釘付けになっちゃうんじゃない?」  う、うん……。そこまでは言ってないけどね?
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