6.太陽のカツカレー

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 真珠ちゃんの反抗期と九十九のおばさんがもたらした特大のクライシス。なんとかそれを乗り越えることができた私は、いまだかつてないほどの幸せと穏やかで落ち着いた気持ちを手に入れていた。  考えてみると過去の私は常に何かしらの不安や心配事を抱えていたように思う。そしてそれがいつの間にか当たり前になってしまって、大して悩まなくていいことまで大袈裟に捉えていたところがあった。それは漠然と『幸せになりたい』と思いながらも現実と向き合おうとはせず、あるものよりも無いものばかりに気を取られ、自分で『私は不幸せなんだ』と思い込んでいたせいなのだろう。  でも今は違う……と思う。かつてはあまり好きではなく、早く抜け出したいと思っていたこの街で、大好きな人たちと一緒に過ごせる日々。ごく小さな、なにげないものかもしれないけれど、それを積み重ねて私の人生が少しずつ前進していることに大きな充足感を覚える。その先に陽ちゃんとの結婚が待っているんだと思うと、大気圏外へ飛び出してしまいそうなほどの嬉しさで胸がいっぱいになるんだけれど、今度はそれと同時に『本当に陽ちゃんの奥さんになっていいんだろうか?』という一抹の不安も感じたりして、我ながら苦笑いしてしまう。どうやら私の不幸体質はそう簡単に治らないみたい。でも、そんな私があって今の私がいるんだもんね。否定するのはやめて、少しずつでも自分を大切にしよう。  さて、去年と同じようにお店を貸し切って真珠ちゃんの誕生日パーティーを開くと、六月はあっという間に終了。七月に入った仙台は、雨とくもりばかりのどんよりとした梅雨空が続いている。お天気が悪いとテンションも下がっちゃうし、洗濯物も乾かなくて困るんだよねぇ。そろそろ燦燦とした太陽の日差しが恋しくなってきたなぁ……。
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