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多難そうな前途にガックリと肩を落とすと、ランチで出たお皿を食洗器に入れ終えた陽ちゃんが笑って取りなしてくれた。
「成長するのはいいことだけど、無理する必要はない。それに少しポヤヤンとしている方が、まどからしくていいと思うし」
はうっ……!
「陽ちゃーん!」
思わず乙女の祈りポーズになっちゃう私に、百瀬さんが聞いたこともないくらい大きな舌打ちをする。
「デレデレすんな! ったく、心底激しく羨ましい!」
あれれ、百瀬さんの怒りポイントはそこ?
「克哉は優しいから、まどかのことを心配してくれているんだろ」
その言葉に思いきり唇を真横に引き、完全に「いいえ!」と否定する状態になりかかっていた百瀬さんは、間近の陽ちゃんに『だよな?』というように首を傾げられ、険しい表情はたちまちバラ色染まった。
「ひゃ、ひゃい……」
コクコクと頷く百瀬さんに陽ちゃんも一件落着という笑顔を見せる。
「それで、鍋の締めは?」
「はいっ! 陽さんの好きな蕎麦ッス! なめ茸とツナの炊き込みご飯でおにぎりも作ったッスよ!」
即答じゃないですか……。私との時と大違い。でもせり鍋の締めに食べるお蕎麦はおいしいんだよね。出汁と味付けがスタンダードだから、結構なんでも合うんだけど。今日のお鍋は鴨肉だから、まさに鴨そばをいただくのと同じ感覚。それに炊き込みご飯のおにぎり……ああ、お腹空いた!
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