最終章.想いの重なるオムライス

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 その話をすると、陽ちゃんも「そうだったなぁ」と感慨深げ。だって、あの日に再会しなかったら今日という日は来なかったんだもの。それだけに当時の自分から今の自分を思うと、いまだに信じられないような気もする。以前は単なる幼馴染で良く知る近所のお兄さんでしかなかったのに、結婚して子どもまで授かったんだもんね……。本当に不思議な巡り合わせだ。 「陽ちゃん、ありがとう。私、すごく幸せです」  感極まって出たのはなんとも陳腐な言葉。それでも陽ちゃんは優しく微笑み、すべてを汲み取って頷いてくれる。心が通じ合う喜びを分かち合い、どちらからともなくキスしようとしたまさにその時、双子たちが同時にふんぎゃあ、と泣き出した。 「いかん、さとられた」  溜め息をつく陽ちゃんと思わず苦笑い。手分けして二人をあやしていると、不意にダダダダ! とすごい勢いで出窓を叩く音が響く。びっくりして振り返ったそこには、朝陽と晴陽を見て涙ぐむ百瀬さんとニッコリ・スマイルで手を振るイリーナがいた。  お義母様……もとい、百瀬さんは、二分もかけてよ~く手を洗ってから双子たちとご対面。最初は触れるのすら壊しそうで怖いと遠慮していたけど、いざ抱っこしたら「めんこいッス! めんこいッス!」と大感激。双子たちよ、この人が三人目のばぁばですよ……と心の中で教えていたのはここだけの話。イリーナは英会話教室で子ども慣れしているだけあってなかなか堂に入っている。  その後、星ちゃんと孝輔も会いに来てくれて、そこへ葉子ママと月菜も帰ってきたから、店内は更に賑やか。双子たちを囲んでみんなが笑顔になる光景に、何事にも代えがたい喜びを感じる。  たとえお金持ちじゃなくても、いろんな苦労や困難があっても、こんなふうに大好きな人たちが元気に、笑顔でいてくれればそれで十分。私の幸せはいつも手の届く身近な場所にあるんだ。 ーおしまいー
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