おまけ掌編

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 四月に入り、仙台は春らしいポカポカ陽気が続いている。 間もなく生後十ヶ月を迎える朝陽と晴陽は、ハイハイするのがとても上手になり、一人で移動する範囲もすごく広くなってきた。  今日は定休日でお天気も最高。お昼を食べ終わると、陽ちゃんが「散歩がてら公園にでも行くか」と言うので、朝陽と晴陽を連れて行ってみることにした。  星ちゃんにプレゼントしてもらった双子用バギーに乗せると、朝陽はじっとしているのが嫌らしく、足をバタバタさせてちょっとグズる。晴陽はそんなお兄ちゃんを反面教師にしているのか(?)、バギーの前の部分を両手でヒシッと掴み、じーっと見ているんだよね。一卵性双生児とはいっても、やっぱりそれぞれの個性があって面白い。  ご近所さんと挨拶を交わしながら美杜稲荷の方へ歩くと、神社の脇にある小さな公園が見えてくる。ここは昔からある公園で、私と丸ちゃんが再会した場所だ。今日もあの日と同じく大きなソメイヨシノの木が絶賛満開中。うわぁ、きれいだぁ……。ついこの間まではまだつぼみだったのに。 「あ、お義父(とう)さんだ」  公園の入り口まで来たところで陽ちゃんが前方を指さす。見れば、桜の木のところにお父さんと印刷屋の佐々木さんがおり、二人でなにやらトンテンカン、トンテンカンと木槌を使い、看板を立てている。 「お父さーん」  おーい、と声を掛けると、お父さんは私よりも孫たちの登場で一気に目尻を下げ、木槌を放り投げて駆け寄って来た。 「あらあらあらあら! あーちゃんとはーちゃんじゃありませんかぁ! じぃじに会いに来てくれたんですかぁ?」  ……え? いや、たまたまだけど……まぁ、いいか。せっかく喜んでいるんだし伏せておこう。 佐々木さんにもご挨拶し、何をしていたのか尋ねてみると、お父さんは「よくぞ聞いてくれました!」と胸を張った。
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