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「これは本当の筍ご飯じゃないね、京都の筍は柔らかくって、こう…香りも繊細でなあ、お前たちに、京都の、本物の筍ご飯を食べさせてやりたいなあ」
「やりたいなあ」の「やり」が平坦で、「たい」で一度下がり、「なあ」が放り投げるように終わる京風アクセントが、むかつく。
「京都の」とやたら言うのは夫の両親が京都の人間だからで、夫は東京育ちであるが、京都の文化は絶対だと言う家庭に育ったために、端々、そういう言葉が出るのです。東京は下町の商家に育った私のことを、夫は一段下に見ているところがあるのでした。
それでも私は
「ふぅん、京都のたけのこ、美味しそうねえ」
と、やんわりその場をやり過ごした。そんな自分もつくづくイヤだ。
さて、黙り込んだ私に、おじいさんはまたもや
「たけのこ、好きか」
と聞きました。
「え、好きです。こないだ買ったんですけど、もう駄目ですね。大きくて硬くて美味しくなかった」
と言ってしまった。言うまい、と胸にしまっていたことを言ってしまうと、又しゅう~~~っと空気が抜けます。おっぱいと一緒に、みすぼらしいブラジャーの中に押さえ込んでいたものが抜けるたびに体の毒素も抜ける気がする。
私の(しゅう~~っ)を察したのか、おじいさんは何故かにんまりして
「いや、まだいける」
と、自分のアグラの中を指差しました。
それまで気づかなかったのですが、腰から下にかけてある厚地のタオルの中心部が、なにやら下から突き上げられて持ち上がっている。ちょうどおじいさんの股間あたり。私はぎょっとして、おじいさんの顔を見た。あろうことか、亀のハクセイのようなおじいさんの顔にほんのり血の気が登っている。クジラに似た横目で私を見、口元には白い綺麗なプラスチックの入れ歯がこぼれている。
え? 私の不安をよそに、おじいさんはゆっくりアグラのタオルを取り除ける。ついつい私も覗いてしまう…するとアグラの真ん中、畳の擦り切れたところを突き破り、茶色の円錐形のものが十センチばかり飛び出しているのでした。
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