椿姫だった。

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鐘が鳴っている。 カラン、カランと、留学先のヨーロッパで聞いたような。 カラン、カランと亜季が弾く、ラ・カンパネルラ。 ◇◇◇ "石川さん!この度のーー" "石川さんはヨーロッパーー" 凱旋帰国した新進気鋭のオペラ歌手。 私の人生で最大で最期の舞台。 国内初の舞台"椿姫" ◇◇◇ スポットライトと万雷の拍手喝采。 余韻の残る控え室に亜季の夫、石川謙治(いしかわ けんじ)が現れる。 「おめでとう、紗季。亜季もー」 火照っていた身体が冷える。 椅子から立ち上り、果物ナイフを隠し持って義兄に近付く。 「ありがとう義兄(にいさん)きっと、これで姉さんは私を一生忘れない…」
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