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どうしてその思いが現れたのかは浩也本人にもよくわからない。いや、言葉でうまく言えないだけなのかもしれない。
だけど、これだけはわかる。今の浩也は恋人をとても欲している。
自分の家に帰ると、温かい料理の匂いと共に母の優しい声が浩也の耳に届いた。それとともに、父の野太い声も聞こえた。
「浩也、お帰り。ご飯、出来てるで」
「おう、浩也! 今日はいつもより遅かったんや? 梅田で女遊びかあ!」
「んなわけないやろ、親父。ただブラブラしてただけや」
「ブラブラ? 誰と? もしかして、浩也?」
「残念ながら、親父の期待している通りではありません」
「なんやと? 何で俺の思っていることを読み取ったんや?」
「何でって……、五年間いつも同じことを言われるともうわかるで」
「そりゃそうか!」
浩也は、大胆でいつも同じネタを話しているのだが周りを笑顔にさせるそんな父が好きだ。
細かいことや小さいことには一切気にせず、浩也がどんな失敗をしても、父は多少叱りつつ、最後は笑って許してくれる。
しかし、あまりにも気にしすぎないので、買い物をする時に、値札を見ずに買ってしまったり契約書をまともに読まずにサインして後々後悔することがある。
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