第一章 星空編

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その結果、繊細な母はいつも父の行動を一つ一つチェックして、監視することが多い。このことに父は愚痴をはいたことはなく、むしろ、頼りっぱなしになっていることを少しばかり気にしている。 「浩也、修学旅行のお小遣いなんやけど、札幌とか函館に行くんやろ? 十万でええか?」 「十万!?」 「お父さん、十万はさすがに高すぎるよ。アラブの石油王の息子じゃないんだから。三万でいいんだよ」 「ええ!? 余市のウィスキーとかサッポロビールとか買ってきてほしいのに!」 「高校生の息子に修学旅行のお土産でお酒を買わせる人が、どこにいますの?」 「それもそっか!」  浩也の父は機嫌よく缶ビールを開けて、グラスに注ぎ、一気に飲んだ。そうして、家族の団欒を過ごした。浩也は明日の世界史のテスト勉強をしてから、布団に入った。 翌日。大阪の高槻にある男子校の中間テストの最後の科目、世界史。テストの勉強のかいがなかった浩也はただボーッと窓から見える空を見ていた。終了のチャイムが鳴った瞬間、浩也は背伸びをした。 「やっと、中間試験が終わったぜ! もうちょいで修学旅行や!」  自分の教室から一歩出ると、周りは修学旅行のムードに変貌していた。他の高校は、修学旅行に外国へ行くところもあるのだが、浩也たちには北海道や東北でも充分すぎるほどの旅行である。     
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