4. マンションとコーヒー

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 僕の友人も、 あのヘリポートで患者として下ろされたんだ。 そう、 あの、 「土木コンサルタント」だ。 彼は、 修士課程最後の土曜日にスキーを担いで、 ビックマウンテンの山を数時間掛けて頂上まで登り、 そこから麓までスキーで一直線に数十秒で滑り降り、 巨木に真っ正面から激突したんだ。 そして、 ドクターヘリで、 ステラシティまで運ばれた。 ビックマウンテンからしてらステラシティまでは、 雪道だと、 車では三時間以上はかかる。 それを、 ドクターヘリは「十五分」でやってのけ、 彼はベッドの上で生きている。 ドクターヘリがなければ、 確実に彼は、 この世から消え去ってしまっていたと思うね。 でも、 失ったものは、 大きい。 片方の腎臓、 膵臓・肝臓・脾臓、 それぞれの一部。 僕がお見舞いに行くと、 苦しながらに「もう、 スキーは、 やらない」と言った。 でも、 次のシーズンから何事もなかったかのようにスキーをしていたから「まったくもう懲りないやつだ」と思いながら笑っちゃったよ。 学生気分が抜けきってないんだね。
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