一千年の旅

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落ちる。落ちる。落ちていく。どこまでも、落ちていく。 温かい場所と、冷たい場所を、それぞれ落ちていく。 そして、何かが顔にかかった、その冷たさで目を覚ました。 「……ぁ」 潮騒の音が耳を叩く。季節はいつだろう。水がこんなにも冷たいのだから、きっと夏ではない。上下一枚ずつ。こんな薄着でこんなところまで来て、何をしようとしていたのか。 「……寒い」 起き上がって体をぶるぶると震わせ、服に付着した泥も払わず、歩き出す。 木の葉はすっかり色づいていたから、秋だろうか。 冷たい風が、濡れて凍えた体をさらに冷やしていく。 「……っ、」 無意識に口にした誰かの名前。 そうだ、自分の名前、は……
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