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09.
「おはようございます」
目を開けるとそこは、キレイなところだった。
日本の古い屋敷みたいで、外は魚が泳いでいた。
そうか、ここが死後の世界なのか。まるで、竜宮城みたいだ。
そうだ、確か僕は海に身を投げて……
「ところで、キミは?」
自分の目の前にいる少女に問いかける。
青い着物に身を包んだ、ポニーテールの少女。
「はい。私の名前はスバルと言います。この屋敷の管理をしております」
「ここは、死後の世界なのか?」
「恐らくはそうかと」
「恐らく?」
「はい。ここに来られた方は皆、死の間際の記憶が曖昧な方ばかりでしたので」
「ということは、キミも?」
「ええ、そうなりますね。それで、あなたのお名前は?」
「申し遅れてごめん。僕の名前は、ヒロ」
「ヒロですか。では、今日からここで過ごすにあたり、注意点がいくつかあります」
注意点はまあ、色々あった。
手洗いうがいはしっかりすること、とか、ご飯の時間には決して遅れないこと、とか本当に死人なのかと疑いたくなるような内容ばかりだった。
せっかく死後の世界なんだから、のんびり過ごしたって良いじゃないか、と彼女に抗議したら、
「いけません。そんな怠けた体たらくでは、生まれ変わった先で幸せになれませんよ?」
と、優しく諭されたのだった。
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