10/11
前へ
/11ページ
次へ
 ヒロヤくんが、あの女に気づいちゃったんです。  ちょっと見るぐらいなら、わたしだって怒ったりはしませんよ。  だけど、ちょっとじゃすまなくて、わたしが話しかけてるのに、あの女に気を取られていて、返事がないんです。  あの女も、初心(うぶ)なヒロヤくんを誘惑して面白がってた。  地味なわたしがおしゃべりしている男の子を自分になびかせて、わたしを(くや)しがらせようとしていることを知ったんです。  許せなかった。  え、そんなこと思いすごしだろうって?   婦警さん、いい加減にわたしが心を読めることをわかってくださいよ。  どうして、仲良しの男の子を階段から突き落としたか、ですか?  あんな安っぽい色仕掛けに、心を動かされる彼も許せなかった。  練習だったんですよ、今日は。  わたしみたいに小柄な女の子でもできるのかなって、人を突き飛ばすことが。  どれくらい力を入れればいいのか、よくわからないから、思い切り両手で押しちゃった。  びっくりでした。あんなに勢いよく転げ落ちていくなんて。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加