6/11
前へ
/11ページ
次へ
 それで、その女なんですけど、いつも同じ電車なんですよね。これは言いましたよね。  車両も同じ。  目ざわりなら、わたしが時間を変えるか車両を移ればいいんでしょうけど、そんなことをすると、なんだか負けたような気分になって悔しいんです。  だって、わたしが入りたかった学校に合格してるんですよ。  あんなに背が高くて、認めたくないけど美人の女が可愛らしい制服を着ているのに、地味なわたしが、こんな平凡でつまんない制服なんて不公平です。  それなのに、わたしのほうがいろいろ気を遣うなんて、プライドが許さない。  中一にもなると、そういう気持ちが芽生えるんですよ。  あ、こんなことぐらい、少年課の婦警さんなら知ってますよね、すいません。  うっとうしくて、鼻につくんですけど、そのチャラい女が、わたしは気になって気になって仕方がなかったんです。  なにを考えているのか知りたくて、いつもそばにいました。  男子がどんなことをすれば胸を躍らせるかを知るには、絶好の観察対象なんです。  だから、あの女とはいっしょの車両だったんです。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加