妖怪さとり

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　ほら、さっきの電車、朝でもぎゅうぎゅう詰めにはならないじゃないですか。人をぬって動ける程度の混み具合。

　だから、あの女をだれが見ているかなんて、すぐわかります。
　みんな、顔と胸とおしりとあしを見てます。

　わたしがスカートをあんなに短くしても、お色気なんてないし、せいぜいロリコンがよだれをたらすだけ。だのに、あの女には、男たちの目が釘付けなんです。

　スカートをですね、わざと指先で上げるんです。ちょっとずつ。
　太ももがぴかぴか光ってました。
　流れる景色をぼんやりながめてるふりをして、男たちの反応を楽しんでるんです。

　女って肌で感じるみたいですよ、見られているのを。
　婦警さんはわかりますか？　わたしには全然ですけど。

　思い過ごしじゃないか、ですって？　
　間違いないですよ、そんなの。
　心の中をのぞくまでもないです。

　だって、その女、スカートをまくってるとき、笑ってたもん。口もとがすうっと上がるんです。

　今はダメですけど、夏服のときはもっと面白いですよ。わざと前かがみになるんです。胸チラってやつ。
　あの女、顔立ちだけでも目立つのに、胸まで大きいなんて。世の中って本当に不公平ですよね。