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「喉が渇いちゃって・・・。すいません、行儀悪くて。でもやっぱり美味しいですね。このレモンティーも・・・。遠慮なく頂きます。」
佑二がサンドウィッチを頬張ると目を見開いて麻美さんに話しかけた。
「いや・・・。これも凄いですね。どっかのイタリアンレストランで出て来そうな味ですよ。」
教授がまた嬉しそうに目を細めながら言った。
「いやあ、嬉しいね・・・。何か月も苦労した甲斐があったよ。例のギャラリーカフェの店主に何度もダメ出しされて最後は喧嘩しそうになってね。」
「へえ・・・。そんなに怖い人なんですか、その男の人は・・・。」
水奈子が不思議そうに尋ねた。
「あれっ・・・?男の人なんて言ってないよ。女性だから、20歳の・・・。」
「エッ?」
俺と水奈子と佑二の声がシンクロした。
「本当ですか?私の一つ下なんですか?」
水奈子が俺と佑二の顔を見回した。
「こんなハイクオリティの味、その若さでどうやって習得したんですか?」
佑二が真剣な顔で教授の顔を見つめた。
「あんまり言うと怒られるかもしれいなけど、実はお父さんがシェフなんですよ。カナダ人の・・・。つまりハーフって事です。」
「エッ・・・。」
水奈子が驚いて声を上げた。
「はあ・・・。なるほどね。でもその若さで5年カフェを経営しているって事は15歳から始めた事になりますけど・・・。」
「その通り、15歳から開店しているんだよ。まあ、最初はお母様がやっていたんだけどね・・・・・。カナダ人のお父さんが病気で亡くなってね。奥さんが始めたギャラリーカフェなんだけど、カナダ人といってもこれまたフランスとイタリアのハーフで料理の味が凄いのはそのせいらしいんだが・・・。奥様も元々大学で栄養学を教えていた人だから、そこの娘さんが上手なのは当たり前のことなんだけどね。中学を卒業して高校にはいかずに母親の手伝いをすると言い張って、母親が根負けしたようなことを言っていたね・・・。」
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