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「娘さんじゃなくて、お母様ってことですか?レシピを教わったのは?」
水奈子が当然の疑問を返した。
「いや、それがまた・・・。お母様もね、亡くなってしまったんですよ、ついこの間の事なんだけどね・・・。カフェの買い出しに行った帰りに、彼女の婚約者と一緒に交通事故でね。」
「エッ・・・。そんな事って・・・。婚約者って・・・。10代で婚約してたんですか?」
「ああ、これ以上言うとあのカフェに出入り禁止になるかもしれないから、皆聞かなかった事にして欲しいんだけどね。二十歳になったら結婚する約束でそのカフェで働いていたバイトの子でね」
一瞬の沈黙が流れた。
「でも、まだ経営しているんですよね。彼女一人で・・・。」
俺は沈黙を破って、教授に質問した。
「うん。まあ、そうするしかなかった、ともいえるんだけどね・・・。いきなり妹と弟たちの保護者になってしまったわけだよね。妹も弟も高校生と中学生で、休みの日にしか手伝ってくれないようだけどね。」
「はあ・・・。ドラマみたいですね。是非ともお会いしたくなりました。」
水奈子がしんみりと言った。
「ああ見えて結構、気難しい子だから婚約者の話は聞かなかった事にして下さい。口が軽いと思われると行きづらくなっちゃうから。」
「そうなのよ、嫌われてあの店のファンだったのに行けなくなっちゃった人もいるのよ。年配の人だけどね。はっきり、もう来ないでください、なんていう子なの・・・。」
麻美さんが補足した。
「へえ・・・。それでも行列できるんですか。驚きですね。」
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