第1章 プロローグ

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「じゃあ、早速今度の土曜日の午後はどうですか?あの店は周期的に何故か通いたくなる魅力があってね・・・。家内も店の大ファンなんですよ。いいよな、土曜日はバイトの子にここはまかせても・・・。」  教授が麻美さんを振り返ると嬉しそうにうなづいていた。  ケーキを食べ終わると雑談を10分程してから早速作業に入った。奥の作業場のスペースを確保するために今置いてある物を選別して裏の倉庫に運び入れなければならない。教授は作品の展示スペースを少し縮小したい、と言った。 「此処の作品を倉庫に運んで欲しいんですよ。この棚3つ分を減らして作業場を広げたいと思うんで・・・大皿や大型の花器などから順に倉庫の奥に運んで下さい。」  天井の高い壁一面いっぱいに作り付けた棚の一番上に、梯子をかけて上から順に作品を降ろしていく。教授が作品を降ろし、それを下の4人がビニールと新聞紙に丁寧にくるんで段ボール箱に入れる。棚3つ分の作品を降ろす作業だけで1時間半かかった。それから俺と水奈子と佑二の3人で作品を運び倉庫で待機している教授の指示通りに倉庫に場所に置いていく、という流れ作業だ。この2つの作業だけで昼になってしまった。次に作品を展示していた棚を解体してまた倉庫に運ぶ。故障して動かない電動ろくろ1機と土練機を外に運び出す。後で業者が修理のために回収しにくるからだ。書籍を減らして半分を作品の棚にする。それらは午後で終わらせる予定だ。 「皆、お疲れ様です。お昼にしましょう。」 教授が工房の入り口で軍手を外しながら言った。 「ご苦労様でした。お昼はサンドウィッチでどうぞ。」  麻美さんが、またテーブルに大皿を運んできた。5cm四方にカットされたパンに色々な具材が挟まっている。パンはローストされていて微かにガーリックの香りがした。佑二が大きなコップに注がれたアイスレモンティーをのどを鳴らして飲んでいる。
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