第3章 ギャラリーカフェの絵美里

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第3章 ギャラリーカフェの絵美里

「そこを左折して下さい。一本道なのでしばらく進むと右側に大きな看板が見えてきます。」  佑二の運転する車が教授の言う通りの道筋を進んだ。ほどなくして起伏の多い畑の中にポツンと2m四方位の手作り風の看板が見えてきた。「EMIRU」と描かれている。奥の方に牛舎のようにも見える煉瓦造りの建物があった。 「その入り口の近くに止めてください。」 教授の言う通りに店の前に廻ると建物の正面側が現れた。赤い煉瓦造りの2F建てでいつか見た明治の倉庫だという建物に似ていた。木製のドアはグレーの光沢のあるペンキ塗りだ。両脇に細長い窓枠があり同じグレーに塗られている。 「相馬・・・、大丈夫か、聞こえるか?」  俺がリヤのドアを開けて相馬の顔を覗き込んだ。 「ああ・・・・、少し良くなりました。水が欲しいです・・・・。」  相馬がうっすらと目を開けて言った。さっきよりは唇に少し赤みがさしたようだった。俺と佑二で肩を貸して、ドアの前でしきりに呼び鈴を鳴らしている教授の後ろに立った。しばらく間があって階段を降りる音がした。それから大股で歩く音がした。 「今日はお休みなんです。店は定休日で開けられません・・・。」  ドアをゆっくり開けて出てきたスッピンの女性の茶色の長い髪は無造作に頭の頂点で束ねられていた。少女のようにも見えたが、一瞬カカシに似ているな、と思った。 「あ、教授・・・。どうしたんですか?奥さんは?」  女性は、紺色の麻のブラウスと淡いダメージジーンズを着ていた。店の外に出てドアを全開にした。
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