第四十段階 慌しいときほど傍にいたい~

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売り上げの低い店舗には、来年の3月のリニューアル時に現売り場から撤退してもらう予定だ。デパート内の婦人服フロアの出店数は、65店舗。その中に入れるかどうかは、全てこの年末の福袋の売り上げにかかってくる訳だ。 ―――客が面白がってくれてくれる事を常に提供したい。それが俺の目標だ。 ―――それに、また藤谷さんにもチャンスを与えられる。売り上げが良ければ、彼女の会社ブランド『mare』が出店出来るんだから。 白井が事務員から 「mareの藤谷さんが、いらしてますがお会いになりますか?」との電話を受けたのは、ついさっきだった。 ―――心がせく。こんなに俺は、脚が遅かったか? 早足でデパート内を歩いた。走る事は禁じられている。客にぶつかったりしての事故を防ぐ為だ。 小会議室へ行くと、貴子の姿があった。 「あ、白井部長」 貴子の笑顔を見られただけで、白井は自分の頬が緩みそうになるのを感じていた。だか、その隣に険しい顔したデカイ男がいるので白井の顔も自然と険しくなった。 「この度は大変なチャンスをいただき、ありがとうございます」 椅子から立ち上がり、丁寧に頭を下げる貴子。続いて尾田も頭を渋々という感じで下げてきた。 「いや、わざわざそれを言いに?」     
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