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「俺との食事を拒んだ理由がコレか」
冷たい言い方をして、もう一度貴子を何か言いたげな瞳で見た白井。少し息を吐いて掴んでいた貴子の手を離した。
貴子の手から徳利を取り上げて、手酌する白井。
「そう言うわけじゃないです。それとこれとは話が別で……私だって知ってたわけじゃないんです。白井部長が来る事」
酒を飲みながら白井は、横に座る貴子を見ないで数回頷いた。
「そうか。そうだよな。金輪際、俺とは食事する気無かったんだよな? なのに、偶然に一緒になったって訳か。ふん……俺が来てさぞかし不愉快だろうな」
「そういう言い方しなくてもいいじゃないですか。人が悪い」
「俺は、性格が悪いんだろうな。きっと。好きな女に嫌われて、食事さえ断られて、さっきは見たくも無いキスシーンまで見せられたんだ。人が悪くもなるだろう。ん?」
白井は、同意を求めるかのように貴子の方を向いた。
「嫌ってるとかじゃないですから。それと、あの……キスとかも見せるつもりじゃなくて」
恥ずかしがりながら弁解する貴子から白井は視線を逸らした。
「もう、いい。弁解しなくて」
貴子は、白井の横顔を見ていた。
冷たい空気が流れ始めた所に澤口が戻ってきた。
「飲んでます? 部長」
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