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ちまちまと食べては、酒で流し込むようにしている白井を澤口は、冷ややかに眺めた。
ーーー何をカッコつけて嫌いなもんはないだと? 良く言ったもんだ。もっと悪酔いさせてやるか。
「貴子、ほら」おぼろ豆腐をスプーンですくって貴子の口元へ持っていく澤口。
「え? あ、でも」白井を見る貴子。
貴子の耳元で「見てないよ」と、囁き白井を横目で見る澤口。
こっちを見ない白井の視線を向かせる為に白井に話しかける澤口。
「白井部長、飲み物もっと頼みましょうか」
「そうですね。お願いします」
顔を澤口の方へ向けた白井に
「おぼろ豆腐は美味いでしょう?」
「ああ」
「ほら、部長も美味いってさ、貴子たべるだろ?」
再度、おぼろ豆腐をのせたスプーンを貴子の口の前に持ってきた澤口。
白井の視線を気にしつつ、小さく口を開く貴子。
ふっと微笑んで、澤口は白井が見ている事を確認しながら、素知らぬ顔でゆっくりとスプーンを貴子の口へ入れた。
ーーー好きな女が、他の男に餌付けされているのを見るのは、どんな気分だ?
貴子の口に入れたスプーンを、当たり前のように澤口が豆腐をすくってから、すぐに自分の口へ入れた。
カップルなら当たり前のような行為を目の当たりにした白井は、唇を噛み締め震える手でお猪口を握りしめていた。
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