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「お客さん、困るんだよねー。酔っ払いは」
タクシーの運転手は、そう言ってドアをバタンと閉めて走って行ってしまった。
ため息をついた貴子は、
「イオン飲料とか水か何か買ってきますね。待っててください」
すっぱい匂いのする液体を吐き出して涙目になっている白井を暗くなっている細長いビルの入り口にある階段に座らせて自販機を探しに行くようだった。
―――最悪な夜だ。至上最高に最悪。だって、そうだろう。俺は、好きな女の前で格好もつけられなかった。それに、好きな女は別の男とキスをして、ベタベタして俺に見せ付けた。
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