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―――あいつのところへ行くなと止めたのに行ってしまってから、いつも考えていた。あいつとはどうなったのか。あれだけ泣いていたのに、仲直りをしてしまったのか。考えても仕方ないのに考えてしまっていた。
「はい、福袋の方は販売のものが30日に納品しますので、よろしくお願いいたします」
「わかりました。福袋の値段は、統一しています。なので、お話したとおりわかりやすく福袋の数が勝敗を分けますから。頑張ってください」
白井は、貴子の前に行き握手を求めた。
「はい、頑張らせていただきます」細い貴子の手が差し出される直前に尾田の大きな手が伸びてきた。
意外な出来事に思わず尾田の顔を見上げた白井。
すると、ニッと白い歯を見せて尾田が言った。
「よろしくお願いします。白井部長」尾田の大きな手が白井の手をぎゅっと掴んでぶんぶんと振ってから、最後にぎゅうっと力を入れて握られた。
手を思い切り握られたので痛さに顔を歪めた白井は、尾田の馬鹿力な手からようやく離れられた自分の手をもう片方の手で揉みほぐした。
―――なんて、馬鹿力だ。こいつと握手するつもりなんか無かったのに。
無意識に尾田をきつい目で見たが、尾田は何事も無かったかのようにコートとバッグを持って帰り支度を始めていた。
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