第四十段階 慌しいときほど傍にいたい~

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「では、失礼します」 頭を下げて小会議室を出て行く尾田に続いて貴子も出て行こうとしていた。 「待ってください。藤谷さん」 「はい?」 振り返った貴子。同時に露骨に嫌な顔をして尾田も振り返った。 「ちょっと、藤谷さんにお話が。よろしいでしょうか?」 ―――俺は、もう少し彼女と話したいんだから。頼むから邪魔しないでお前だけ出て行ってくれ。 白井は、文句を言ってきそうな尾田を挑戦的な目で見返していた。 「話なら、俺も」そう言い出した尾田を制して、貴子が言った。 「尾田、悪いけど先に行っててもらえる?」優しいが有無を言わせないような少し強い言い方だった。 「……わかった。じゃあ、先に行く。けどよ、なんかあったらすぐに電話しろよ。油断ならねえからな」 白井がまん前にいるにもかかわらず、尾田は失礼な事だと知ってて言っているのか、考えもなく言っているのか知らないが大声で威嚇するように言った。 「尾田、失礼だよ」 ドアから尾田を追い出すように背中を押したあと、貴子とふたりきりになった白井は少なからず緊張していた。     
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