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第四十段階 慌しいときほど傍にいたい~
年末の忙しさは、何もデパートに限った事ではない。
だが、この日の白井はまさに猫の手さえも借りたくなるほどの忙しさだった。
昨日の突然の休みも、山積みの仕事の上に更に仕事を付け加えた形になっていた。
「福袋は、各店舗で準備出来てるんだよな?」
いつものように、客の入り具合と店の状態を把握する為に婦人服の担当の安藤主任とフロアを周る白井。
「はい。どの店舗も気合入ってますから」
「特設会場の福袋なんだが、そっちも問題なしか?」
「はい、大丈夫です。ですが、本気ですか?」
何か言いたそうな安藤主任。
「やってみないとわからないだろ。他と同じ企画をやってたって仕方ないんだ」
「ですが……」
「安藤主任。安定した事ばかりやってたら、客は面白がってくれないんだ。買い物するのにわざわざ来てくれている客をどれだけ楽しませるかは、俺達にかかっているだろ?」
白井は、客に笑顔で挨拶しながら淡々とした口調で静かに言葉を続ける。
「それに、予定通り広告も出してくれ。各店舗からのクレームは、俺に通して欲しい。俺が責任を取るから」
福袋の売り上げのみで、現在出店中の65店舗と特設会場に出る予定のブランド10社も含めての売り上げ競争をする。
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