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森田伊織とは中学校からの付き合いだ。 クラス毎に並ばされた時、均整のとれた長身の体躯が目を引いた。 大手学校法人の御曹司で厳しい教育を受けて来たらしく 物静かで、あまり感情を顕わにすることが無かった。 人をそらさない術を叩きこまれているんだろうか。 人を見下したり、自慢げな態度をとらず素直だ。 口数が少ないくせに、言いたい事ははっきり言う。 大人びた雰囲気を持っていて、中二病とは無縁な感じがした。 学校では何をやらせても器用に「そこそこ」だった。 勉強も、上の中くらい、 部活の水泳もずば抜けて速いというわけでなく、 常に3位から6位入賞まで、という感じだった。 野心とか、一番になろうとか、そういうガツガツしたものが 感じられず、 いたってヌケヌケと毎日過ごしている感じだった。 お坊ちゃん気質っていうものなのかも知れない。 そのくせやけに勘がするどい。 のんびりしている所と素直な所、時折見せる幼い笑顔が 気に入った。 それと、彼のからだ。 これが俺の人生にとって、とても大事な事を教えてくれた。 俺は、男性しか好きにならないし、欲情も感じない。 それは、心と体の性別が合っていない訳でもなければ いつかは治るものでもなかった。 男性である俺は、男性の伊織を、好きになった。 中体連、2年の時、 伊織の泳ぐ姿を見てからだが反応した。 もしやと虞れていた事はやっぱり正しかった。 俺はそのことを ほとんど絶望を持って受け入れた。 周囲には知られたくないと思ったし、 伊織には、絶対に知られたくなかった。 今も知られたくない。 それから俺は伊織の出ている大会の応援には行かなくなった。 多分その時、俺の中二病もしくは、中二病の仮病は終わった。 常にもやもやした気持ちを隠しながら友達とじゃれあう事は もうできなかった。
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