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隣にいる俺がどんな思いでいるかも知らずに 伊織はその思わず見とれるようなきれいなからだを 成長させて行った。 俺は自分がゲイだと知られたくないために ゲイだと知られても大丈夫な人物かどうか見極めるために、 人の言動を観察し、思惑を推しはかるようになっていった。 洞察力と深読み力、 そんなものが同世代の奴らよりよほどついたと思う。 それは就職してから、相手の欲しいものを先取りして 商談を進めていく、 営業力という意外なところで役立っている。 多分伊織は気付いていないだろう。 裏のない、素直な、物腰のきれいな伊織。 俺の気持ちを知らずに、 俺を一番の親友だと疑わない伊織。 その伊織が、いい大人になった今になって中二病らしい。 子供なら軽くて済んでも、大人の場合は まず間違いなく重病化する。 そしてヤツが感染したのは俺のせいだ。 一番大事な伊織を、 多分ヤツの人生で一番つらい目に合わせている。 土下座してもまだ足りない位の気持ちだった。
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