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Ⅰ
入社後たった2年半で異動になった。
配属された部署が「役目を終えた」という理由で解散になったからだ。
売り上げが落ち、採算があわなくなっただけだと思う。
メンバーは散りじりになり、俺も東京本社から異動を余儀なくされた。
なんと郷里のすぐ近くだ。
引継ぎを受けるために数日滞在し、あらためて引っ越してくる
手筈になっている。
さっそく支社に挨拶し、先輩社員と既に到着していた手土産を携えて
大手代理店とディーラーの挨拶回りをする。
名刺はもう作られていて、
名刺に「新任挨拶」の判まで押してある。
上司、引継ぎをしてくれた先輩社員と3人夕食をとって
二人は事務所へ戻り、俺は早速10年来の友人に電話をかける。
「あ、森田?…うん、こっちに異動になったんだよ。
なんだお前?酔ってる?」
伊織が一人で酔っぱらうまで飲んでいるのは珍しい。
「どうした?珍しいじゃん」
懐かしい名前が出て来た。
「椎名さん?え?いいよ。いまそっちいくわ」
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