プロローグ

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 海老石・ディーン・藤彦。傲慢不遜な態度をとるこの男こそが、この海老石探偵事務所の主だ。アロハシャツ姿で団扇を扇ぐ姿は、とても探偵とは思えない。思えないのだがこのくるくるパーマのアラサーは探偵なのだ。それも名探偵。 「それで、早速本題に入りたいのですが」 そう言いながら諫早が懐から取り出したのは、一枚の写真だった。 「海老石さんにはこの、遺言書の謎を解いていただきたいんです」 尊が持って来たお茶を啜ると、海老石は鋭い目つきのまま写真に目を落とす。尊も海老石の背後から覗き込むようにして写真を眺めた。  その写真には、一枚の紙切れと封筒が写っているだけだった。封筒の大きさから推察して、A4サイズの用紙に筆ペンで書かれたような字が踊っている。綺麗な字だった。 その先頭には、『遺言書』とやや大きめの字で書かれており、誰がどう見ても諫早の言うように遺言書だ。  だが、諫早は先ほどこうも言った。この遺言書の謎、と。
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