プロローグ

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「祖母は遅くに父を産んだもので、発電所が稼働していた時代を生きた人です。だから、この遺言書もきっとあの遺構のことを指しているはずなんです」 尊は自然と小さく頷いていた。それは、ごく自然な推理だ。無理がない。  しかし、諫早は先ほど「小学校に入るまでは伊佐市で育った」と言っていた。つまり今は? 「小学校に上がってからは新しく東京に建てた家で暮らしていました。大学が家から離れているから、今は一人暮らしをしているけど」そこで一旦区切り、諫早は言葉を継ぐ。 「祖母も、その時から足を悪くしまして。伊佐市には頼れる親戚もいなくなっていたから、一緒に東京に来ることになったんです」 諫早が小学生ということは、今から十年以上も前のことになる。それからずっと、諫早真清は伊佐市を離れていたことになる。 「だとすれば、貴木くんの見立てには不可解な点がある」海老石が言った。
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