プライド(ファウスト)

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 剣が離れ、共に下がる。それでもファウストはすぐに前に出た。ルースもそれを予想している。ぶつかりあう中で、ルースは狂気に笑う。 「悔しそうに歪み、憎悪にギラつき、憎しみにかられる。戦場で見る貴方のその顔が見たかったのですよ」 「ルースゥゥゥ!!」 「軍神といいながら甘っちょろい、貴方のそういう部分に虫唾が走るのですよ!」  ルースの膝がファウストの左脇へと強く入る。その瞬間、痛みに思わずよろけた。  体勢が崩れる、その隙を許す相手ではない。上から切り下ろす剣が、ファウストの胸を切り裂いた。 「っ!」  身を引いて、深みは避けた。だがドクドクと血が溢れ出す。胸と、脇腹とが一緒に脈を打つように痛んだ。 「やはり、傷がありましたか。芽が出るかわからなくても、種は蒔いておくものですね」 「お前……」 「いい様です、ファウスト」  深い笑みが残酷な形を作る。振り上げられる剣を避けたが、踏ん張った途端に崩れそうになる。ルースの身の動きは俊敏だ、その瞬間を予測して走り込み、更に胸を蹴りつけ、剣を弾き首へと突き込んでくる。薄らと切れた首筋に、血が流れた。 「おっと、頭に血が登りましたね。簡単に殺しては惜しい」 「なんだと?」 「いえ、もっともっと苦しんで頂かなくてはいけないので。そうですね…足と腕は不要でしょう」     
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