プライド(ファウスト)

3/9
374人が本棚に入れています
本棚に追加
/82ページ
「……すぐに戻る」 「あぁ、期待しているよ」  ニッと笑ったランバートに頷いて、ファウストは前に出た。  男が場所を空ける。その道を、ファウストは真っ直ぐに走った。  真っ直ぐ行ったその先は、ダンスホールか何かなのだろう。広い中に、隅に寄せられたテーブルなどが見える。  その真ん中で、ルースは待っていた。よく知っている、薄い笑みを浮かべて。 「ようこそ、ファウスト。待っていましたよ」 「ルース…」 「そんなに怖い顔をしないでくださいよ。これでも、心づくしのおもてなしをしたつもりですよ」 「もてなし?」  何を言いたいのか分からない。険しい表情のまま、ファウストは睨み付ける。  ルースの口元が、酷薄に上がる。陰鬱なのに、鮮やかなその表情は鋭く険しく、狂気じみている。 「部下が死に、守るべき民に拒まれ、仲間が倒れ、民が傷つき」 「!」 「恋人が死ねば、より素敵だったのですがね」  弾けるような怒りのまま、抜きはなった剣はルースと正面からぶつかった。ガチガチと力任せの音がする。  近い距離で、ルースは笑った。とても綺麗に。 「その顔です、ファウスト。貴方のその顔が見たかった」     
/82ページ

最初のコメントを投稿しよう!