【序章】 『災禍のレギオン』

1/29
35人が本棚に入れています
本棚に追加
/759ページ

【序章】 『災禍のレギオン』

 覇王ゲイリッジ・フォン・ドルヴォイが大陸制覇を目指し、一大帝国を築きながらも道半ばに倒れてから既に半世紀以上。  覇王亡き今も、大小の国々が生命を燃やして相争い、綺羅星のごとく明滅を繰り返す乱世が続いていた。  まるで夢半ばで倒れた覇王の妄執が、大陸に取り憑き、そこに生きとし生けるものを呪っているかのように。  それは誰かが“大陸制覇”の偉業を成し遂げるまで、“祭り”の終わりを許さぬ常軌を逸した呪いであったのかもしれぬ。  少なくとも、多くの者がそう信じた。   だとするならば、この呪いが解かれる日など、本当にくるのであろうか。  大陸中にひしめく国は夜空に浮かぶ星々のごとく存在し、それらの制覇が果て無き夢だからこそ、ゲイリッジは挑み、それに際して自国民に告げたのだ――「『千国時代』を終わらせる」と。  そして後世、それを逆説的に捉えた学者が現れる。  その時より、『戦獄時代』が始まったのだ――と。  文字通り、戦という獄に下った大陸から、昼夜を問わず戦火が絶えることはなくなった。  あれから半世紀以上。  祭りの終わりは、まだ、見えない――。          『災禍のレギオン』     
/759ページ

最初のコメントを投稿しよう!