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中天をとうに過ぎた今日一番の強い陽射しを浴びる羽倉城は、高さや豪奢な門構えがあるわけでもないが、内在する厳粛な空気を放ち、異界の森ではひときわ目立っている。
「(森の“惑わし”も受けちゃいねえんだ。俺たちが間違えるはずがねえ)」
憤りを向ける相手もなく唸り声を上げるのはグルカだ。
「“キョウノモノ”が消え、儂らが現れた……?」
目の前の現実を噛みしめるように月齊が起きたことを言葉に代える。
「……なるほど」
仏の説く道理を得たような高僧のごとき面持ちで呟くも、実際のところは何も分かってはおらず、ただ何となくそんな言葉が洩れてしまう。
実際、どうせよというのか。
自分達が受けた衝撃を考えれば、そう口にするよりほかはなかったのだ――。
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