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私は目を開けた。黒いものが視界いっぱいに映る。
少し離れてみると黒いものは男物のスーツとわかる。
(…私、何してたっけ?)
目の前のスーツの男は歩いて行ってしまう。
(あ…追いかけなきゃ)
私は急いで後を追った。
(…どうして私はこの人について行くんだろう。…この人は誰なんだろう)
そう思いながらも、私はついて行くのをやめることはできなかった。
(顔見たい)
男は赤信号で止まった。
でもどうしてか私は男の前へ回り込み顔を覗き見ることが出来なかった。
(…何かがおかしい)
うーんと唸りながらまた目を瞑り考え始めた。
男が先に行ってしまわないか不安になり、ちらりと目を開けた。
(小さい…?)
私は浮いていた。宙を浮いて男を上から見ていた。
頭に?がいくつも浮かんできた。
信号が青になり男は歩き出す。
私は地面に降りられず、ジタバタしていると泳ぐように前に進めた。
スイスイと進み男の後をつける。
(私はどうしてあの男について行くんだろう。私はどうして浮いているんだろう)
疑問は?となりまた私の頭の上に浮かんでいた。
宙で胡坐をかき、頭に手を置き考え込む。
そうこうしているうちに男はバスに乗ってしまった。
気が付いたときにはもう遅く、手を伸ばしてもバスは遠くに行ってしまった。
(さて、どうしようか。家に帰りたいけど、何かがあの男を追えと言ってくるし)
私は額に人差し指と中指を当て、目を瞑る。
(ドラ〇ンボールの孫悟空みたいに、気を探って…。瞬間移動ー…なんちゃって)
目を開けるとバスから男が降り、歩いているところが見えた。
(いや、できるんかーい。冗談だったのに本当に出来るなんて…)
男はまた歩いて行ってしまいそうだったため、急いで追いかける。
(この人は何者なんだろう。…運命の相手で、夢でそれを追ってるとか?…この人に私は何か伝えることがあるとか?)
少しだけワクワクしながら男の後をついて行く。
(何してる人だろ。何歳かな。私のこと知っているのかな?)
男はキョロキョロと辺りを見回し路地裏に入った。
私もついて行った。
男は路地裏にあるゴミ捨て場の隅に座っていた。
(何しているんだろ。スーツ汚れちゃうよ)
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