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女子高生の声が聞こえた。
「ばいばーい」
「えーその道通るの?狭くない?」
「狭いけど近道だもーん。じゃあねー」
「そお?じゃあまた明日ー」
女子高生はルンルンと男のいる方へ歩いてきた。
男の前に差し掛かった瞬間、男は立ち上がり、女子高生にぶつかる。
(え?)
「きゃあっ…痛ったぁー」
男は立ちながら倒れている女子高生をただじっと見つめている。
女子高生はわき腹に手を当て違和感を持った。
「え?なん、で?さ、刺し、た?」
男は持っていたナイフで女子高生の足を片方ずつ刺す。
「★〇!&%?*’$;??????」
女子高生は言葉になっていない悲鳴を上げた。
男は満面の笑みで宙を見た。
私と、目が合ったような気がした。
男は口パクでこう言った気がした。
「綺麗だね」
私は自分の姿を改めて見た。
私の腹部や手足は血だらけだった。
ひどい頭痛が走る。私は両手で頭を押さえた。
だんだん記憶が蘇ってくる。いろんな場面が頭の中に流れ込んでくる。
そうだ、私は死んだんだ。
私は、この男に刺されて死んだ。
どうしてずっとこの男の後をつけていたのかやっとわかった。
私は自分を殺した人の顔をどうしても見ておきたかったからだ。
男は路地裏を後にした。
私はまた男について行く。
殺された怒りよりも、またこの人の笑顔を見たいと思ってしまった。
この人の死ぬ瞬間を見たいと思ってしまった。
この人をもっと知りたいと思ってしまった。
これは、好奇心であって、恋ではない。
たぶん。
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