再会の香り

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 彼を初めて見たのは新入生代表として話している時だった。普通にカッコイイ人だと思ったし、話もしっかりしてる人だとも思ったが、その時はそれだけだった。  本当に、いつから彼を好きになったのだろう。  思い返してみる。  新入生で友達も居なかった私が移動教室の場所が解らず迷っている時に助けてくれた時だろうか。  あの時、彼は私を送ってしまった為に自分の授業には遅れてしまった様だった。本当に優しい人だ。  ああ、それとも、マラソン大会の時にうっかり足を捻って座り込んでいた時、先に行っていた筈なのに戻って来て担いでくれた時だろうか。  いや、もしかしたらソレを理由に彼のファンの子達に倉庫に閉じ込められたのを助けてくれた時?  あの時は同じファンなのだからお話ししたいと思ってしまったが。彼女達はどうやら同担拒否というやつだったのだろう。それなら仕方ない。  それとも……  チリも積もればと言うやつか。思い出せば彼にはいつも助けて貰っていた。何の接点もない私にまで優しいくしてくれるのだ、きっと仏の様な人だったのだ。  今頃はきっと可愛いお嫁さん等貰って幸せに暮らしている事だろう。  卒業式の時、思い切ってボタンの一つも頂けたら本望だと、勇気を振り絞って近づこうと思ったが、上着どころかYシャツのボタンまで全て奪われセクシーな状態になっていたので諦めた。  帰りに運動用の靴を回収しようと思ったが、何故か消え、変わりに誰の物かも解らないボタンが置かれ、最後の最後に何だか良く解らない嫌がらせをされたのはビックリした。  それも今はいい思い出である。  このボタン…… 結局誰の物だったのだろうか。  そんな事を考えつつ、私は同窓会の案内用紙にペケを付けた。  その日は新しい会社に顔を出す日だったのだ。  非常に残念である。
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